いつでもまっすぐ

舞台OSLOオスロ 感想

3月20日、3月21日 特殊陶業会館にて舞台OSLOを観劇してきました。

 

座席は20日は2階後方センター。21日は1階後方下手。

一幕1時間40分 休憩20分 二幕1時間の計3時間。

20日は18時開演のソワレのみ。21日は大千秋楽で13時開演。

 キャスト・役について

本昌行さん テリエ・ルー・ラーシェン役

以前トップハットというミュージカルを見て以来二回目の舞台でした。

かっこいい。(初っ端からこんな感想でごめん笑)かっちりしたスーツが本当に似合ってて渋くて初見の私はひいひいしてた(笑)安蘭けいさんとの夫婦役でしたが、ちゃんと左手の薬指に結婚指輪はめててきゅんとしました…。テリエさんは妻のモナさんのカイロ赴任に一緒についていき中東各地を巡ります。そこで目の当たりにした暴動?に「こんなことではだめだ。」と和平に向けて奔走します。社会学研究所の所長ということで民間人。彼が事の発起人ですが、完全に裏方であり言葉にしにくい、履歴書には書きにくいような仕事をした人だなと思いました。しかし彼がオスロ合意成功の潤滑油だったんじゃないかと。実際に劇中でもガソリン代わりにウイスキーをみんなに注ぎまくってたし。巻き込み力があるというか、彼の人柄や立場や言葉がひとつづつ信頼につながって、「この人が言うなら、やるなら」と人が動いていく。こういう人の下で働くと働き甲斐あるんだろうなあと思いましたね。しかしただ実直に使命感に燃えてる人だけじゃなく、立ち回りが上手いところもある人です。

モナが何も言ってないのに「モナがそう言ってました!!」とかいうし、そのあとに「君は嘘をつなかいからね」みたいなこと言われて「はい!」とか言うし……(笑)「言っちゃった手前、何とかするしかないでしょ!」みたいな、営業でもこういう人いますよね…(笑)そしてそういう人に振り回される事務方の私たち…(笑)話逸れた。

蘭けいさん モナ・ユール役

テリエの妻であり外務省の職員。その人脈と聡明さでテリエと同じくらい、いやそれ以上に合意へ尽力した人物だと思います。知的な美しさというのか、ただただ憧れちゃいます。理想を語るテリエを「やれやれ」と見守り(理想を語る人も大事ですが)、ヤイルを勇気づけ、時に決裂する男性陣に渇を入れ、どんだけ働くんだというくらい縁の下の力持ちな人物。こういう言葉はふさわしいかわかりませんが昔でいう内助の功、みたいな?名もなき苦労も多そうだな…と思ったり。

一見、モナさんの方が事務的かと思いきや、ヤン副大臣やペレス大臣の接客責任者なんかに怒ったりするところが描かれてて感情を出すのは彼女の方。テリエさんは受け流すタイプ。

好きなシーンは迎賓館のコピー機を無断で使ってる間に故障してあたふたしてるSPに

モナ「そんなのあの女性(接客責任者)に聞きなさいよ!」

SP「いやでも無断で使ってますし…(言えるわけない)」

モナ「あなた銃持ってる!?」

SP「はい…?」

モナ「それで何とかしなさいよ!」

っていう豪快なシーン(笑)銃でも何でも使ってなんとかしなさい、と(笑)強い。

あともう一つ好きなのは最初テリエが和平交渉を始めようとモナに持ち掛けるときに「君はもっとも美しく…人脈があり…」と口説き落とす(?)ところ。ここテリエが後ろから安蘭さんの耳元で「君はもっとも美しく…」って言って、モナの手の甲にチュってキスをして「一緒にやろう」って言うんですよ!?坂本君のイケオジがさく裂してるし、それに「これにNOと言えます?」とほだされちゃうモナも可愛い。なんだかんだお互いの愛情がある感じが良いです。

テリエモナ夫妻はモダンかつスマートな雰囲気で好きでした。

合郁人さん ヤン・エゲラン/ロン・プンダク 役

河合君がこういう内容も他のキャストも上質な良作に出てくれて本当に嬉しい。ヤンはモナの上司、なんと外務副大臣役です!(笑)外務大臣役の石田さんと部下の安蘭さんに挟まれて若い河合君、やり手なのかなあと勝手に想像してました。ロンはイスラエルの経済学の准教授です。天真爛漫な?ぽやっとした役で風貌ものび太君みがあって可愛い。ロンの研究室のゼミ生とかになって、本だらけの部屋の中で一緒に過ごしたい…(急な妄想)。ところでやはり忘れてはいけないのが早替え。本当に捌けて20~30秒くらいで髪も服もすべて完璧に替えて出てくるんですよ。何が起こってるのか全然わからない。ヤンはぴっちり髪も整えてかっちりとした細身の3ピーススーツ。ロンは髪はぼさぼさでくたびれた綿のシャツにカジュアルなジャケット。いくらネクタイやボタンが一発で付け外しできるように工夫されてるだろうとはいえ、出てったと思ったらいつの間にかいる。当たり前っちゃ当たり前なんですけど姿勢や歩き方まで瞬時に変えてて河合君の器用すぎる部分が出てました。職人…。

ヤンの好きなシーンは前半にテリエモナ夫妻の提案をヤンに持ち掛けて「あなたなら/君なら、わかるわよね?/信じてるよ」とヤンに圧力をかけるシーンです。ここ、良い意味で年上の力に逆らえ切れないヤンが子供みたいで可愛かったです。テリエとモナに挟まれて3人でソファに座ってて小ささがプラスに働いてた(笑)。

一番好きなロンのシーンは後半、記録係のバインダーをポイッと投げられて「ああ〜(汗)」と取りに行くところです。バタバタしてて可愛い。最初は空気読まないしテリエに「あいつ大丈夫か!?」と言われてたけど、険悪ムードになると何気に「まあまあ」って空気読んだりしてほんわかしたキャラでした。オーバーサイズのコートにデイパック背負った姿は丸っこくて、相島さん演じるヤイルもコロッと太ってて、丸々とした冬のスズメと鳩みたいで可愛かったなあ。

河合くんの演技について私はあまり言及することはなくて、やっぱり私はストーリーやキャラを考えたくなる人だなあと思いました。

 

好きだったシーン

☆福士さんと益岡さん演じるウリとアブアラが口論になり、雪の中を2人で歩くシーン。

お互い立場が違うから対立してるけど、そういうのを全部抜いて1人の人間同士でいると娘の名前が同じだったりで心の距離が近くなる描写に胸が熱くなりました。それを遠くで見守るテリエとモナ。2人もなーんか良いよね!そしてウリとアブアラが笑い合う所を見た2人が「やった!」って喜ぶのが私も嬉しい。心に暖かな明かりがついたような優しさがある。

 

☆テリエとウリが2幕後半で対峙するシーン。ここ本当に見てるこっちも息止めてグッと集中しちゃうぐらい良かった。しかし高度な解説は出来ないので「オスロ テリエ ウリ」で検索して他の人のブログ読んでください(笑)

 

☆ テレカン時にアブアラが「みんな泣いているんだ、まさかこんな日迎えられるとは思ってなかった」と言うシーン。そうだよね、好きで対立してるわけではなくて、そこには多くの人の血と涙が流れ、疲れはてて、でも譲れないんだよなぁ…。結果としては未だ解決されてはいませんが…。今回の話は2つの国の話ではなく、そこに住む何千、何万人の人達の話なのだと改めてハッとしました。

 

劇中に出てくるジョーク・文化・キーワードなど

○ヤイルのジョーク

○ロンのジョーク

 

○靴

この舞台には「靴」という言葉が出てくるセリフが多すぎてなにかの暗喩なのかな…と思うのですが、いかんせん私の教養が無いせいでまったくわかりません…。

ウリ「あいにく靴は1足しか持ってきてないんだ」という所やシモンペレスがテリエの靴を褒める発言。

あとセリフではないですがシモンペレスが迎賓館?に戻ったあと私は休むといってわざわざ部屋に戻る前に靴を脱いだ部分。別にその場面で脱がなくてもよかったのかなーと思う箇所なのでこれもなにか意味があるんじゃないかと。靴は検索するとかなり意味をったモチーフみたいなんだけどそれっぽいのが見つからない…。私は「靴=仕事」なのかなーと思いましたけど、どうですかね?

 

○戦闘機の話

大物感ありありで出てくるシモンペレス外務大臣。革靴の話も一緒に出てくるのでそことの関連性もあると思うのですが、私は革靴と戦闘機が結びつかないので別個で考えたいと思いました。「戦闘機のパイロットになりたいと思った。母は低くゆっくり飛ぶことが条件だと言った。しかし高く早く飛ばないと敵に撃ち落とされると私は言った。」というセリフ(ニュアンス)他の人はレザーとレーザーを掛けてる、という意見もありますが、戦闘機がレーザーなのだろうか?むむむ。

○最後の鳥の羽ばたき

最後、テリエとモナが2人で舞台上に残り、テリエが客席に向かって一人語りかけるんですけど、そこで鳥の羽ばたく音が聞こえるんですよね。私は勝手に平和の象徴のハト、未来への希望だと思ってます。

感想

Twitterだとどんどん埋もれてしまうのでここではTwitterに書いた感想を張り付けておきます。完全なる私の備忘録。

・私達は日本で生まれ育ちラッキーなことにそのまま日本で生きているけど、陸続きの国々やその他地域では祖国が無くなったり追われたりという人々が未だに多くいる。人間、色んな欲求があるけれど「故郷が欲しい」という願いはなんと哀しいことだろうと思った。

・日本は人種や民族の意識、宗教によっての一体感みたいなものがあまり意識することが無い国だったから、劇中で描かれる「渇望する気持ち」ってすごいなと思った。

オスロ、交渉において妥協点を探すことってお互いの歩み寄りが必要不可欠だと思うんだけど、その歩み寄りの過程を自然に観せていて観客に「さっきこの人、挑戦的だったのに急に友好的になった!?」っていうのが無かった。ここの丁寧さが演出の信頼ポイント…。

オスロ、重厚な人間ドラマなのはもちろだけど外国の人達特有のチャーミングさっていうのかな、おちゃめな仕草があって好きでした。

・「アラファト」という名前に指でダブルクォーテーション付ける仕草もあれ知らんかったら見落すな〜、私はシン・ゴジラ石原さとみがやってるの見て知った…あれオシャレだよね…

・とても静かに動く舞台だけど、大切な作品。河合くんが出てなかったら知ることも見ることも無かったけど、河合くんが出てなくても見れて良かった舞台だった。